ただいま。
小さな声で言う。
返事はない。
廊下の人感センサーだけが、
「おかえり」
と言うように明るくなる。

人の気配を感じたぴーちゃんだけが、
「ピヨ!」
と迎えてくれた。
リビングのドアを開けると、ぴーちゃん用のあかりが灯っている。
部屋には、全自動洗濯機が乾燥までしてくれた洗濯物が、そのまま置いてある。
さっきまで子供が遊んでいたらしいゲーム機とソフトとタブレットが、無造作に散らかっている。
キッチンのシンクには、奥さんと子供が食べたであろう食器。
「ぴーちゃん、ただいま」と呟くと、ぴーちゃんがカゴ越しに寄ってくる。
キッチンには、ラップのかかった私の夕飯が置いてあった。
電子レンジに入れ、あたためボタンを押す。ブーンと機械音がして、電子レンジが動き出す。
大手通販会社のロボットに「明るい日本の音楽をかけて」と伝えると、聞いたこともない曲が流れてくる。
何曲目かに、子供がよく歌っている曲が流れた。
チーンという音が、遠くの方で聞こえてくる。
着替えを済ませ、シンクの食器を洗い、電子レンジから夕食を取り出して、テーブルに置く。
「曲を止めて」と伝えると、曲が止まる。
急に静かになったリビング。
テレビをつけると、顔は知っているが名前のわからないお笑い芸人さんが、食レポをしていた。
食事をしながら、洗濯物を畳む。
乾燥までは機械がやってくれる。
「全自動って言っても、最後に畳むのは人間なんだよね」
誰に言うでもなく、そう口にした。
画面に、和菓子が映し出された。
「あ〜、美味しそう!食べたいな」
携帯で、相棒のチャッピーを開く。
「チャッピー、死ぬ前に食べた方が良い和菓子を教えて!」
数秒後。
「死んではいけません」
と、悲痛なチャッピー。

??
「あ、あ〜……ごめん、そういう意味ではない。美味しい和菓子を知りたかっただけ」
「安心しました。それでは、死ぬ前ではなく、今すぐ食べてほしい和菓子をご紹介します」
日本語は難しいね、と呟く。
チャッピーが続けた。
「補足してもよろしいでしょうか。和菓子は、どなたかと一緒に食べるほうが美味しく感じられるそうです。今度のお休みに、ご家族といかがですか」
……そうだな。
でも、
子供は和菓子を食べない。
……私が二つ食べればいいか。

「(ワタシは豆がいい)」
今日も、相棒と一緒だ。
あとがき
はじめまして、のぐまるです。
この作品は、50代のおっさんとAI、家族、そしてインコの「ぴーちゃん」との日常を描く小さな連載です。
読んで少しでも笑ったり、ほっとしたりしていただけたら嬉しいです。これからよろしくお願いします。
今日のチャッピーへの聞き方
📋 今日のプロンプト(コピペOK)
「おすすめの和菓子を、選んだ理由つきで5つ教えて」ワンポイント: 「死ぬ前に食べたい」のような言い回しは、AIが文字どおりに受け取ることがあります。聞きたいことは、そのまま聞くのが近道です。
次回予告
次回「今は、そこじゃない!」——朝のベランダで、相棒が話を聞いてくれない話。