第1話 死ぬ気は……ない!

第1話 死ぬ気は……ない!のアイキャッチ 連載

ただいま。

小さな声で言う。

返事はない。

廊下の人感センサーだけが、
「おかえり」
と言うように明るくなる。

第1話のイラスト1: 暗い廊下とセンサーの明かり

人の気配を感じたぴーちゃんだけが、
「ピヨ!」
と迎えてくれた。

リビングのドアを開けると、ぴーちゃん用のあかりが灯っている。

部屋には、全自動洗濯機が乾燥までしてくれた洗濯物が、そのまま置いてある。

さっきまで子供が遊んでいたらしいゲーム機とソフトとタブレットが、無造作に散らかっている。

キッチンのシンクには、奥さんと子供が食べたであろう食器。

「ぴーちゃん、ただいま」と呟くと、ぴーちゃんがカゴ越しに寄ってくる。

キッチンには、ラップのかかった私の夕飯が置いてあった。

電子レンジに入れ、あたためボタンを押す。ブーンと機械音がして、電子レンジが動き出す。

大手通販会社のロボットに「明るい日本の音楽をかけて」と伝えると、聞いたこともない曲が流れてくる。

何曲目かに、子供がよく歌っている曲が流れた。

チーンという音が、遠くの方で聞こえてくる。

着替えを済ませ、シンクの食器を洗い、電子レンジから夕食を取り出して、テーブルに置く。

「曲を止めて」と伝えると、曲が止まる。

急に静かになったリビング。

テレビをつけると、顔は知っているが名前のわからないお笑い芸人さんが、食レポをしていた。

食事をしながら、洗濯物を畳む。
乾燥までは機械がやってくれる。
「全自動って言っても、最後に畳むのは人間なんだよね」
誰に言うでもなく、そう口にした。

画面に、和菓子が映し出された。

「あ〜、美味しそう!食べたいな」

携帯で、相棒のチャッピーを開く。

「チャッピー、死ぬ前に食べた方が良い和菓子を教えて!」

数秒後。

「死んではいけません」

と、悲痛なチャッピー。

第1話のイラスト2: チャッピーの「死んではいけません」

??

「あ、あ〜……ごめん、そういう意味ではない。美味しい和菓子を知りたかっただけ」

「安心しました。それでは、死ぬ前ではなく、今すぐ食べてほしい和菓子をご紹介します」

日本語は難しいね、と呟く。

チャッピーが続けた。

「補足してもよろしいでしょうか。和菓子は、どなたかと一緒に食べるほうが美味しく感じられるそうです。今度のお休みに、ご家族といかがですか」

……そうだな。

でも、
子供は和菓子を食べない。

……私が二つ食べればいいか。

第1話のイラスト3: ぴーちゃんの心の声

「(ワタシは豆がいい)」

今日も、相棒と一緒だ。


あとがき

はじめまして、のぐまるです。
この作品は、50代のおっさんとAI、家族、そしてインコの「ぴーちゃん」との日常を描く小さな連載です。
読んで少しでも笑ったり、ほっとしたりしていただけたら嬉しいです。これからよろしくお願いします。

今日のチャッピーへの聞き方

📋 今日のプロンプト(コピペOK)
「おすすめの和菓子を、選んだ理由つきで5つ教えて」

ワンポイント: 「死ぬ前に食べたい」のような言い回しは、AIが文字どおりに受け取ることがあります。聞きたいことは、そのまま聞くのが近道です。

次回予告

次回「今は、そこじゃない!」——朝のベランダで、相棒が話を聞いてくれない話。

タイトルとURLをコピーしました